山麦さんへ
お届けしたほめことば
突如の遠征に駆り出された小狐丸は暗く長い廊下を歩いていた。急な編成変更で断りきれず非番の小狐丸が出陣したのは今朝のことだ。
三日月はもう休んだだろうか。
残念そうに見送る顔を思い出せば罪悪感が首をもたげる。
落ち込む心とは別に自室に向かう足は慌てるように早くなった。
そうして小狐丸は見慣れた戸の前で足音を落とした。
「小狐丸」
「・・・起きていたのですか。」
引きかけた戸の内側から穏やかな声がかけられた。
「約束したからな。」
隙間から覗く白い夜着を纏った姿を見て小狐丸は部屋に滑り込む。差し出された月の両手に自身の頰を擦り付けた。
「遅くなりました。」
「構わない。」
そっと三日月の手が小狐丸の髪を撫で梳いた。労うような指の動きに思わず目を細めると首の後ろまで腕がまわされた。
「三日月殿?」
ぐっ、と体を引き寄せられ、瞳に互いが映り込む程に距離が縮まる。
冷えた空気に晒された身を暖かな体温が包み込んだ。
「今宵は月を愛でてくれる約束だ。」
どこか拗ねたような音に小狐丸は思わず顔を緩ませた。
ああっ⋯これは⋯先生だな!!!!!!?おしどり夫婦ご馳走様です!!!!!!!!
あなたもほめてあげましょう。